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思い出が無くなること

地元の、かれこれ20年近く通った洋服店が突然閉店した、と聞いたのは、今年の初春だった。


地元・甲府の、オフィス街から少し離れたところにある、小さなセレクトショップだった。母が私が生まれる前にたまたま見つけたのがそもそもの始まりで、私の家とそのお店の繋がりは、25年以上になるらしい。

生まれた時の服やら、お弁当箱やら、いろんなものをその店で買った。欲しい物を見つけては、母と嬉しくなって楽しくなって、買っていた。私がかねてより愛する「ヒステリックミニ」との出会いも、そこでの出会いがきっかけである。山梨で取り扱っている店は唯一そこだけで、東京にある専門店を見るよりもひとつひとつが魅力的に見えたからか、上京するまで、ちょくちょく通っていたものだ。


そのお店は、マスターのおじさんが1人で経営する、小さなお店であった。結婚もされておらず、おじさん(といつも呼んでいた)が毎日1人で店頭に立ち続けていた。赤ん坊の頃から通っていたからか、中学生になったあたりから、行くたびに「大きくなったね」と言われたな、と思う。毎度毎度、服から、ある程度成長してからは、実用的で使いやすいものをと雑貨を選んでみせてくれたり、「こんどこんなの入るよ」と楽しそうに言ってくれたことが、今でも嬉しく思い出される。


そんな店が、思い出の場所が、突然姿を消した。店舗にはシャッターが閉められ、張り紙はなく、電話番号がつながらない。

驚いた。声も出なかった。

母が考えるに、「マスターが倒れたのではないか」という。それなりに準備をして店じまいをするのなら、何かしらの知らせをするはずであるから、急な何かがあったのではないか、と。

ふと思い立ち、ある日の晩に、私も試しに店に電話してみた。やはり、つながらなかった。また驚いた。声も出なかった。少しだけ目が潤むのがわかった。


思い出の場所が無くなるのは、悲しく、身に応えるものがある。寂しい。

失って強くなる、ということを言う人もいるけれど、(存在自体を)失って(心の中の一部も)なくすことも、ある。

あるんだ、と思った。ここまで苦しく思うのは、初めてだった。きっとこの先同じようなことがたくさん続くようにも感じた。

なんだか、耐えられる気がしない。






という訳で、もし甲府にあった「チムチムチェリー」というお店をご存知、もしくはなにか情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。